2020年東京五輪におけるホテル不足問題の鍵となる「ホテルシップ」とは | SUITABLISM

2020年東京五輪におけるホテル不足問題の鍵となる「ホテルシップ」とは

いよいよ2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック。大勢の訪日外国人が見込まれることを予想し、都内には次々とホテル開業のニュースが飛び込んでいます。

政府は、2020年に訪日外国人4,000万人を目標としており、オリンピック時には1,000万人と予測。現状、ホテルの客室は1万室ほど不足といわれています。

しかし、そのためにホテルを開業しても、オリンピック後は利用者が減り、経営がなりたたないのではないかという懸念も。

そこで注目を集めているのが、大型客船をそのままホテルとして活用しようというもの。

クルーズ船などを一定期間港湾に停泊させ、宿泊施設として活用する「ホテルシップ」は、過去にも各国で行われてきたものです。

今回はこのホテルシップについてご紹介していきましょう。

オリンピック等に活用された「ホテルシップ」の事例

まずは過去に同じようにホテルシップを活用した事例を調べてみました。

  • 1964年:日本・東京オリンピックにてホテルシップ5隻が滞在。延べ3,500人が宿泊したとか。
  • 1989年:横浜博覧会にてクイーン・エリザベス2号(約7万トン・2008年引退)がホテルシップとして2カ月近く横浜港に係留され、延べ18万人が利用。
  • 2010年:カナダ・バンクーバーオリンピックにて3隻。開催期間中の30日間でのべ19万人が利用したそうです。
  • 2011年:東日本大震災のときにも、被災者支援のために「銀河丸」「ふじ丸」の2隻がホテルシップとして提供されました。
  • 2012年:イギリス・ロンドンオリンピックで3隻。
  • 2014年:ロシア・ソチオリンピックで4隻。
  • 2016年:ブラジル・リオデジャネイロオリンピックで2隻。

このような過去の事例により、今回の東京オリンピックにおけるホテル不足を解消する手段として白羽の矢が立ったのがクルーズ船によるホテルシップです。

クルーズ船を「ホテルシップ」として活用するメリット

クルーズ船をホテル代わりとすることで、開催国と観光客、そしてクルーズ運営会社にメリットがあります。

開催国がホテルシップを利用するメリット
  • オリンピック開催期間中だけ、足りない客室を確保できる
  • 新たにホテルを建造するリスクを回避できる
観光客がホテルシップを利用するメリット
  • クルーズ中とほぼ同じサービスを体験できる(宿泊中は食事やエンタテイメント、アクティビティを楽しめる)
    クルーズ船がホテルシップとして運用するメリット
  • クルーズ船の魅力を知ってもらうことで船旅への興味、関心を高めることができる

高騰する東京オリンピックの予算の中で、ホテルシップは実現する価値が極めて高い取り組みだと言えますね。

ホテルシップ実現のために改正された法律とは

訪日外国人増加に伴い、違法な民泊サービスが増えるという問題が起きていました。

2020年東京オリンピック・パラリンピックではさらなるホテル不足という課題もあります。

2018年5月、国はクルーズ船を活用して宿泊サービスを提供することについて、各自治体に一任することで、規制緩和を行うと発表。

2019年6月、住宅宿泊事業法(民法新法)が施行されました。

 

ホテルシップ実現に向けた取り組みまとめ
  • クルーズ船を活用した宿泊サービスの可否判断を自治体に一任し、規制緩和へ
  • 窓のない客室でも宿泊可能に(旅館業法を改正)
  • 外国人クルーが寄港地で上陸できる期間を7日間から15日間へ延長、さらに申請により滞在を伸ばせる(入管法の改正)

2020東京オリンピックにてホテルシップとして活用されるクルーズ船2隻

2020年東京オリンピック・パラリンピックでホテルシップとして活用されるクルーズ船がすでに2つ決まっています。

一つはJTBがチャーターしたプレミアムクラスのクルーズ船「サン・プリンセス」、もう一つは東京都が招致したMSCクルーズ所有の船「MSCリリカ」です。

JTBがホテルシップとしてチャーターした「サン・プリンセス」

「サン・プリンセス」は、プリンセス・クルーズが運航しているプレミアムクラスのクルーズ船。大きさは中型クラスで約7万7千トン、アットホームなサービスが魅力です。

「サン・プリンセス」の概要
  • 約7万7千トンの中規模客船、上質なサービスとラグジュアリーな空間が魅力のプレミアムクラス
  • 乗客定員数2,022名に対して乗務員数900名。乗務員1人当たり2.2名のお客様を担当
  • 日本食も用意されたビュッフェレストラン、単品注文も可能なメインダイニングでグルメな食事が味わえる
  • 日本語サービスが充実。外国船籍でも安心してくつろげるのが魅力
  • 本格的なラスベガススタイルのショーを日替わりで楽しめる
  • ルームサービスやバーなどのサービス料は自動で加算、それ以外のチップは宿泊料金に含まれている
「サン・プリンセス」のホテルシップ概要と料金目安

JTBは「サン・プリンセス」を2019年もチャーターし、98日間の世界一周クルーズを予定。

さらに翌年の東京オリンピック・パラリンピックのホテルシップとしてチャーターが決定しています。

  • 2泊3日でワンパッケージ、最大9パッケージ(18泊)、2名で1室利用
  • 宿泊は偶数泊で販売(2泊、4泊、6泊など)
  • 宿泊料金は7万円から60万円を予定
  • 宿泊費用には食事代、エンタテイメント(プール、ジャグジー、スポーツコーナーの利用やショーの観覧など)が含まれている
  • ソフトドリンク、アルコール類、一部有料施設利用は別料金
  • オリンピック観戦チケット付きプランも発売予定
  • オリンピックの試合をパブリックビューイングで適宜観戦可能にする予定

クルーズで優雅にオリンピックを楽しむ、なんてのもありかもしれません。

「サン・プリンセス」が停泊するのはアクセス抜群の横浜港

「サン・プリンセス」が停泊するのは、横浜観光の中心地でもある山下埠頭を予定。

JTBは横浜市と提携し、係留中は山下埠頭周辺を「Hotel Ship Park」として空間を整備する計画を発表し、さまざまなイベントなどを企画中です。

オリンピック競技会場にもなる横浜は、東京とのアクセスも抜群。早くも注目を集めています。

サンプリンセスが横浜港に停泊するメリット
  • 野球会場となる「横浜スタジアム」まで徒歩約15分
  • サッカー会場となる「横浜国際総合競技場」まで電車で約30分
  • 陸上競技会場となる「新国立競技場」まで電車で約1時間
  • 周辺には横浜で人気の観光スポット「みなとみらい地区」や中華街
  • 横浜の美しい夜景をたっぷり楽しめる

東京都とタッグを組むのはMSCクルーズ「MSCリリカ」

「MSCリリカ」は、地中海スタイルのおもてなしが人気のクルーズ船。

2003年に就航したイタリア船籍のカジュアルクラスの客船で、女優のソフィア・ローレンが命名者(ゴッドマザー)です。

大きさは中型クラスで約6万6千トン、エレガントかつ斬新な演出やサービス、コスパの高さで大人気の客船になっています。

「MSCリリカ」の概要
  • 約6万6千トンの中規模客船、モダンと伝統が融合したラグジュアリーな空間が魅力のカジュアルクラス
  • 乗客定員数1,984名に対して乗務員数721名、乗務員1人当たり2.8名のお客様を担当
  • 2つのメインレストランと屋外レストランでイタリアンの他、各国料理を用意、船内で職人が焼き上げるこだわりのパンが有名
  • ビバリーヒルズバーや英国スタイルのバーロードネルソンパブ、ピアノバーなど、各国を旅する気分が味わえる
  • 最新スタイルのブロードウェイシアター完備、受賞歴のあるエンタテイメントが楽しめる
「MSCリリカ」のホテルシップ料金目安

現段階では発表されていません。随時更新します。

  • 2019年3月末まで基本協定を結ぶ予定
  • 地中海クルーズでの料金:11泊12日間で約196,900円から
  • 1泊あたり:日本円で約17,900円
  • 両親と同室の12歳未満のお子様は宿泊料無料

オリンピックのホテルシップでも同じような料金が適用されたら、リーズナブルに宿泊できますね。

料金発表までしばし待ちましょう。

「MSCリリカ」が停泊するのは江東区にある木材埠頭

今回MSCリリカが停泊する予定なのが、東京都江東区にある15号地木材埠頭。

こちらの整備は2020年3月までに終えることを目標にしているそうです。

この埠頭は現在、若洲にある東京都木材埠頭株式会社が管理しており、国内最大の木材物流基地です。

近くにはキャンプ場などがある若洲公園になっており、恐竜橋と呼ばれる東京ゲートブリッジを見渡せる景勝地として人気があります。

木材埠頭への交通アクセス

  • JR京葉線・東京メトロ有楽町線・りんかい線「新木場駅」下車
  • 都営バス「若洲キャンプ場行き」に乗車
  • 「若洲中央」バス停下車約3分

おそらくオリンピック開催時には、駅までのシャトルバス運行など、利便性を考慮した体制を計画していると思われるので、各競技会場までスムーズに移動できるのではないでしょうか。

木材埠頭停泊のメリット
  • 陸上競技会場となる「新国立競技場」までJRで約30分、東京メトロ利用で約40分、
  • テニス「有明テニスの森」、体操「有明体操競技場」までりんかい線で約4分、
  • 水泳「東京辰巳国際水泳場」まで車で約15分
  • 東京ゲートブリッジの美しい夜景をたっぷり楽しめる

その他ホテルシップ受け入れを検討している港

現在候補に挙がっているのは、以下の2つ。

  • 川崎市:東扇島港
  • 千葉県:木更津港

東扇島は羽田空港に近く都心にもアクセスが優れているのがメリットです。

オリンピックをきっかけにクルーズ客船の誘致も検討中だそうです。

また、木更津港は地方創生の一環として港を整備。東京湾の新しいクルーズ拠点整備を目指しています。

また、東京副都心に「東京国際クルーズターミナル」が2020年に開港が決まりました。

7月14日にロイヤルカリビアン社のクルーズ船「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」が初就航します。

こちらの港もホテルシップに活用される可能性はありますね。

2020年東京オリンピック・パラリンピックのホテルシップまとめ

オリンピック開催をきっかけに、クルーズ旅行がさらに注目を集めることは不可避でしょう。

このチャンスに豪華客船に親しんでみてはいかがでしょうか。

  • 過去のオリンピックでもクルーズ船をホテルシップとして活用した事例がある
  • 東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせ、クルーズ船を「ホテルシップ」利用できるように旅館業法等を改正、規制緩和された
  • 現在、ホテルシップとして活用が決まっているのは「サン・プリンセス」とMSCクルーズ「MSCリリカ」の2隻
  • ホテルシップ停泊予定港は「サン・プリンセス」が横浜港、「MSCリリカ」が江東区にある材木埠頭(整備予定)
  • この他ホテルシップが係留する可能性がある港は川崎市の東扇島港、千葉の木更津港